長男の嫁 義父母の介護は義務?【親の生活】

連載コラム

介護が必要になったとき、誰が介護する?

高齢者の方に、「誰に介護されたいですか?」と質問したとき、いろいろな回答があります。
・介護施設に入居する
・訪問介護を利用する
・家族に介護されたい  など
介護施設や訪問介護の場合、介護を仕事としている専門家ですから、負担をかけることがありません。家族の場合は、どうでしょうか?

配偶者が介護するとき、夫婦の年齢が近いことが多いです。
「老老介護」や「認認介護」と呼ばれることがあるように、高齢者同士での介護・認知症同士での介護となる場合があります。
子供が介護するとき、子供が仕事をしていることが多いです。
「介護離職」と呼ばれることがあるように、介護が大変で仕事を続けることが難しくなり、仕事をやめてしまう場合があります。
また、子供自身が仕事等で介護ができないときには、その配偶者である妻が介護をすることも多いです。
「介護離婚」「介護別居」と呼ばれることがあるように、義父母の介護の負担が妻にかかり、子供夫婦の仲が悪くなり、離婚や別居をしてしまう場合があります。

このように、家族が介護するときには、様々な問題が起きます。
介護の専門家ではないので、体力的にも精神的にも負担がかかります。
血のつながりのない義父母の介護となると、その負担はもっと大変になると思います。
長男の嫁だから介護するのはあたりまえと考える方もいますが、本当にそうでしょうか。

高齢の親 介護

長男の嫁には養父母の介護をする義務がある?

法律上、そのような義務は存在しません。
直系血族(父母・子・祖父母・孫など)と兄弟姉妹は、扶養や介護をする義務がありますが、姻族には扶養や介護をする義務がありません。
嫁は子どもの配偶者であり、「姻族(婚姻によってできた親戚)」ですので、義父母の介護をする義務はありません。
しかし、民法には同居の親族は互いに扶けあわなければいけないと定められています。
そのため、同居している場合には、互助義務が生じます。

法律上の義務はともかく、実際は長男の嫁が義父母の介護をすることが多いと思います。
長男は仕事が忙しいなどの理由で介護をすることが難しいと、どうしても嫁が介護することになります。
介護の状態にもよりますが、もともと折り合いが悪かった場合、それでもお世話をしないといけない嫁の苦痛は大変なものと思います。
「介護離婚」や「介護別居」はこの苦痛が限界になって起きてしまうのでしょう。
長男が生きている場合なら我慢できるかもしれませんが、長男が亡くなったあとで介護が始まることもあります。
その場合でも、義父母の介護はしないといけないのでしょうか。

高齢の親 介護疲れ

「姻族関係終了届」で姻族関係をやめられる

配偶者が亡くなったあとに、「姻族関係終了届」を提出することで、配偶者の血族(配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・従兄弟姉妹など)との関係を断ち切る方法があります。
姻族関係を終了するので、同居していた場合でも義父母の扶養や介護の義務がなくなります。
配偶者の死後に提出するため、「死後離婚」と呼ばれることがあります。

「姻族関係終了届」を役所に提出するタイミングとしては、配偶者が死亡し、死亡届が提出されたあとであれば、いつでも提出は可能です。提出の期限もありません。
本人の意思のみで提出でき、姻族の了解も必要ありません。
配偶者の遺産を相続した後でも、相続分を返す必要もありません。
旧姓に戻る、また戸籍から抜けることはありません。
「死後離婚」と呼ばれることはありますが、離婚するわけではなく、あくまでも姻族を終了するだけです。

メリットが多く感じられるかもしれませんが、一度提出すると復活することはできませんので、よく考えてから提出するようにしましょう。
「姻族関係終了届」を提出すれば、義父母の扶養や介護をする義務はなくなり、苦痛から逃れることはできますが、義父母側も扶養義務がなくなるのですから、金銭面で頼ることもできなくなり、同居していた場合は住むところも探さないといけなくなります。
亡くなった配偶者との間に子供がいる場合、その子供と義父母の関係は変わりませんから、孫に会いたいと言われたときでも拒否をすることはできません。

デメリットもありますから、安易な気持ちで提出することはお勧めしませんが、この制度があることを知ることで、いざというときに苦痛から逃れる手段があるという気持ちになり、少しでも苦痛を和らげることができたらと思います。

姻族関係終了届


プロフィール

氏 名  渡辺 美智代
1966年 神奈川県横須賀市生まれ横須賀育ち
ファイナンシャルプランナー オフィスまみぃ代表
横須賀市とその周辺の地域を中心に個別相談・相談会・セミナー講師をしている。終活カウンセラーを取得してからは、葬儀会社と連携し、葬儀後の各種手続きのサポートも行う。
実績
横須賀市の弁護士・税理士・行政書士・社会保険労務士と「横須賀知恵袋」という団体を作り、月1回の無料相談会を開催
その他の事業
「起業ママ支援ユメノタネプロジェクト」
「ファイナンシャルプランナー資格活用塾FP+」
「介護・相続サポート窓口」 他


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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