悪気はなくてもイラつく言葉【親と繋がる】

連載コラム

老人ホームでおこった「ケンカの原因」とは

自分が気づかないところで他人を怒らせてしまった経験、皆様にはありますか。

先日、有料老人ホームで働いている知人から、入居者さん同士でケンカが起こった際に仲裁に入ったときの話を聞きました。
もともと折り合いが悪いお二人(仮にAさん、Bさんとお呼びします)だったようですが、ある日食堂で怒鳴りあいのケンカになり、職員である知人が呼ばれて双方からお話を伺うことになりました。
Aさんはケンカの発端が「相手が自分のことをバカにしたため腹が立った」と主張したのですが、Bさんは「バカになんかしていない。勝手にAさんが怒りだしたから言い返しただけだ」と言います。
そこでさらに話を聞いていくと、みんなでお孫さんの話をしていたとき、BさんがAさんに対し「Aさんまだお孫さんいないの?それはかわいそう」と発言したことがAさんにとっては「孫がいないことをバカにされた」と感じ、口論に発展したのだとわかりました。

Bさんにしてみれば軽い同情心の気持ちで発言したのかもしれませんが、もしAさんがひそかにお孫さんの誕生を心待ちにしていたとしたら、その一言で不快な気持ちになるのも理解できますよね。

高齢者 ケンカ

「かわいそう」という言葉が持つ意味

私はカウンセリングで色々な年代の方とお話しする機会がありますが「〇〇だなんてかわいそう」というフレーズは比較的高齢の女性が多く用いるように感じます。

ちなみに「かわいそう」という言葉は「かわいい」と由来は同じで、古語の「かわゆし(顔映ゆし)」から派生した言葉だそうです。意味としては「弱かったり小さい立場の者に対して抱く”慈悲”の気持ちを表す」もので、「慈しむ」気持ちが強いと「かわいい」、一方で「悲しむ」気持ちが強いと「かわいそう」という表現になります。

そう思うと怒ることもなさそうですが、「かわいそう」も「かわいい」も本来は「(自分より)弱いもの、小さいもの=下位の者に抱く感情」の表現です。使っているほうはそういう意識がないかもしれませんが、自分が「かわいそう」と言われたらあまり嬉しく感じませんよね。それはもしかすると「かわいそう」という言葉のもともとの意味をなんとなく感じ取るからかもしれません。

高齢者

考え方や価値観が凝り固まってくる日常にも問題が?

一方で高齢者は外出の機会も減り、暇つぶしに一日テレビを見て受け身の情報にずっと触れている方も多くなると思います。するとテレビ番組は耳目を集めそうな内容を取り上げますから、事件や事故、世間の批判を呼びそうなニュースなどネガティブな情報に接する機会も増えてしまいます。その繰り返しで「(自分は大丈夫だけれど)世の中は大変な思いをしているかわいそうな人が多いのだ」という上から目線の思い込みを強化して、日常会話でも他人のことを「かわいそう」と気軽に発言してしまうことがあるのかもしれません。

しかも今の高齢者世代は「結婚して子供を持ってこそ一人前」「仕事を辞めるなんて我慢が足りない」「一流大学に入れば人生安泰」などといった画一的な価値観のなかで育ってきています。その価値観から外れることは不幸なことという思いこみが強いので、多様な生き方や人生観を認められず「不幸→かわいそう」と思ってしまう面もあるでしょう。

いずれにしても年を重ねると新たな考えを取り入れるのはなかなか難しく、日常生活でもどんどん考えが凝り固まっていくのは仕方ないかもしれません。

高齢者 孤独 テレビ

他の表現を使うよう親にアドバイスしてみる

親との会話のなかで「〇〇ちゃんまだ結婚していないの?ご両親がかわいそうね」などといった何気ない言い方にカチンときた経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

子供なら遠慮なく「その言い方はイラつく」などと言えますが、親が無意識に他人に不快な思いをさせ、不要なトラブルに巻き込まれるのは困りますよね。

同情する気持ちや心を痛めたということを表したいなら「かわいそう」ではなく「お気の毒」「残念」「お辛い」など、違う言葉をなるべく使うように子供世代からアドバイスしてあげてもいいと思います。

本当は優しい気持ちを示したかったのに、相手には逆に伝わってしまうのは残念です。
周囲との衝突や誤解を避けるためにも、親がよく使う言い回しをたまに確認してみてください。

高齢者


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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