親の「こころの変化」【親とつながる】

連載コラム

親の「こころの変化」を受け入れる

親にとって、子供はいくつになっても子供であるように、子供から見ても親はいつまでも親。時にケンカをすることがあったとしても、子供は心のどこかで親のことを「人生の先輩として頼りになる存在」と思っている場合が多いでしょう。
しかし、年月がたつにつれ、子供が大人になるのと同時に、親にも様々な変化が現れます。加齢による老化は身体的な衰えに加え、精神的にも影響を及ぼすのです。親のこころにはどんな変化が現れてくるのかを見ていきましょう。

思いやり

突然怒り出す

日常の出来事に対して、いきなり怒って家族にどなり出したり、お店などで店員さんにクレームをつけたりします。話を聞けば怒った理由は理解できるものの「そこまで激高するほどのことかな?」と不思議に思うほどささいな内容であることが多く、子供としては戸惑うでしょう。

他人の愚痴、悪口ばかり話す

以前は他人のことを悪く言ったことがなかったのに、今は自分の周りには意地悪だったりルールを守らなかったり、イヤな人しか存在していないのだといわんばかりの話をするようになります。または「自分は疎外されている」というような、被害者意識を全面に押し出す話が多くなります。

話し出したら止まらない

実家に行くと、普段はあまりしゃべらなかった親がここぞとばかり話しかけてくるようになり、しかも同じ内容の話を何度も繰り返します。聞いてるほうは最初のうちは「へえ」など反応できますが、話が終わらないうえに同じ話ばかりなのでだんだんイラついてきます。

飲酒や喫煙をしだす

若いころはお酒が飲めなかったりたばこが苦手だったのに、なにかのきっかけで飲酒や喫煙をはじめることもあります。多くのケースは「たしなむ程度」にとどまりますが、孤独感を感じていたり悩みを抱えていると量が増え、依存症に移行する場合もあります。


「尊敬できる親であってほしい」という願望が強いと
つい親を責めてしまう

上記のような行動をするようになる親に驚き、ショックを受ける方も多いでしょう。
そのため親に対して「恥ずかしいから外で怒鳴らないで」「そんな暗い話ばかりされても聞きたくない」「体にいいことないから、お酒やたばこをやめてほしい」などときつく言ってしまうこともあるかもしれません。
実際のところ、人格的になにか問題があるからそういう行動をとるわけではなく、ほとんどの方がむしろ真面目で誠実な人柄で、周りからの評価や信頼も厚く、仕事や家事育児に一生懸命取り組んできた「いい人」なのです。
しかし、そんな「いい親」を見て育ってきたからこそ、子供にしてみると「今まで通り尊敬できる親でいてほしい」という思いが強く、失望したり強い口調で責めたくなってしまいます。

親怒る

親の変化の背景にあるものは

程度の差はありますが、一般的に年齢を重ねると脳も老化するので、それに伴い感情のコントロールなどがしづらくなると言われています。そのため若いころは理性で押さえつけていた思いが、加齢に伴い良くも悪くも解放されてくると、上記のような行動に現れてきます。たとえば、怒りを感じても「他人に短気だと思われるから怒ってはいけない」などと自制してきた人が、年齢を重ねてその抑制が効かなくなり、ささいなことでも怒ってしまうようになるのです。
しかも抑制が強ければ強いほど反作用の力が働くので「とても優しくて物静かな人だったのに、年をとったら人が変わったようにすごくワガママで感情的になった」といったことが起こるのです。

よき父、よき母であるために頑張って生きてきた親たちは、もしかすると今までの人生で、自分の希望や気持ちを押し殺し我慢を自分に強いてきたことが多かったのかもしれません。彼らが育った時代背景を考えても、現代よりは個人の自由を尊重してもらえなかったでしょう。理不尽に感じたことや、不平不満もたまったでしょうが、自分よりも周囲の意見を優先して耐えてきたこともあったはずです。

親の精神的な変化は、自分に課されていた社会的な役割が一つずつなくなるにつれ、「素の自分」を出しやすくなってきたからともいえます。そのため変化が起こりやすくなるのは「仕事を定年退職後」「親(親の父母)を看取った後」「子供が巣立った後」などが多いです。
また、加齢により今までできたことができなくなってきたことに対するもどかしい気持ちが変化を引き起こすこともあります。「老いていく自分」に対する漠然とした不安感があるのでしょう。
そんな親に対して、子供としてはどのようなアプローチをしていけばいいでしょうか。

親の子供時代の話を聞いてみる

親の子供時代、結婚前の若いころの話を聞いてみてください。親は自分の親からどんなふうに育てられたのか、どんな学生時代だったのか、好きだったこと、やりたかったことは何かなどを聞いていくと、親がどのような状況でどんな思いをして人生を過ごしてきたかがわかり、現状の変化を理解する一助になります。

親子写真

新しい役割をお願いする

仕事を無事勤め上げ、子供も手を離れて、これから第二の人生を楽しめるはずなのに、実は本人がさほどやりたいこともなく時間を持て余していると、社会からの孤立感などから上記のような言動になってしまうこともあります。
その場合は、植木の手入れやペットのお世話など、毎日、無理なくできることをお願いするのもおすすめです。適度な責任感が生活に良い緊張を生み出し、生きがいにつながれば精神的にも安定してくるでしょう。
子供の立場から見ると失望するような変化であっても、視点を変えて親の心理的な背景を想像すると、目くじらをたてるばかりでなく、「今まで頑張ってきたのだな」と受け入れ、優しく見守る気持ちも持てるようになるのではないでしょうか

親ペット世話


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


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