生前贈与と相続のルールが65年ぶりに変更!【親の生活】

連載コラム

生前贈与 相続7年前まで相続財産に加算!

相続直前に生前贈与して相続税から逃れることを避けるために、1958年の制度改正で作られた生前贈与の現行ルール「相続3年前まで相続財産に加算」が、65年ぶりに変更となりました。
新しいルールは「相続7年前まで相続財産に加算」です。

相続財産

相続対策の王道として行われる暦年贈与

贈与税には1年間(1月1日~12月31日)の贈与が110万円までなら非課税という仕組みを活用し、毎年110万円以内で贈与(暦年贈与)を行い、相続財産を減らしていく方法があります。
毎年110万円ずつ生前贈与していくと10年間で1100万円相続財産を減らすことができます。
これを3人の子どもに対して行ったら、3300万円も相続財産を減らせます。
相続の10年前から、この生前贈与をしていた方が亡くなった場合、現行ルールでは3年前までの分が相続財産に加算されるため、1100万円のうち330万円が加算されていたのですが、新しいルールでは7年前までの分が相続財産に加算されるため、1100万円のうち770万円が加算されることになります。
4年~7年前の贈与に関しては、合計から100万円控除できるというものが新設されたので、770万円―100万円=670万円が相続財産に加算されることになります。
今回の改定で、相続税がかなり増税されると思われます。

この新しいルールが開始されるのは2024年1月1日。
2028年に相続が発生した場合、
1年前 2027年、2年前 2026年、3年前 2025年、4年前 2024年、5年前 2023年、6年前 2022年、7年前 2021年ですが、
2024年1月1日までは移行期間であるため、加算の対象外となるということです。
つまり、2023年は移行期間での対象外になるため「生前贈与の駆け込みの年」となります。

また、現行ルール新しいルールとも対象は相続人であるため、孫や子どもの配偶者などの相続人以外の方への贈与は加算の対象外です。
相続人以外への生前贈与の活用も検討するといいです。

ただ、孫の場合、子どもが先に亡くなってしまっていたときには代襲相続(相続の権利を引き継ぐ)が行われ、相続人になることがあるので注意が必要です。

名義預金に注意!

「名義預金」というのは、口座名義人と実際の所有者が異なる預金のことをいいます。名義預金と判断されてしまうと、相続財産とみなされてしまうので注意が必要です。
本来贈与というものは、贈与する側と贈与される側の双方の合意が必要な契約です。
ですから、「贈与を受けた側が自由に使えない」「贈与されている認識がない」場合には、贈与は成立せず、脱税行為と扱われてしまうことになります。
祖父母が孫の名義で通帳を作って、そこにコツコツ貯金をしてあげていたというのは「名義預金」となってしまいます。

名義預金

「名義預金」と思われないためには

1.入金履歴だけでなく出金履歴もあること
贈与を受けた側が自由にお金の出し入れができることが贈与なので、贈与したお金の入金履歴だけで出した形跡が全然ないと、贈与として認められない可能性があります。
出金履歴も残すようにしておきましょう。

2.贈与を受ける側が利用しやすい銀行であること
贈与する側が利用しやすい銀行で口座を作るケースが多いですが、贈与を受ける側が使いづらい地方銀行や信用金庫の場合、名義預金とみなされる可能性があります。
贈与を受ける側のメイン口座等、使いやすい口座の通帳に入金されるようにしましょう。

3.他の通帳と同じ銀行印であること
贈与される側の銀行印が、贈与の入金がある口座だけ他の通帳と異なった三文判を使っていると、名義預金とみなされる可能性があります。

4.通帳は贈与される側で保管していること
贈与されたお金は自由に使えるようにしないといけないので、贈与する側が保管していては名義預金とされてしまいます。贈与を受ける側で通帳を保管しておきましょう。

5.贈与契約書を作成していること
贈与されている側が贈与されている認識がないと贈与とみなされないので、きちんと贈与契約書を作成して、双方で保管しておくようにしましょう。

孫に贈与する場合、実際に通帳を管理するのはその親であることが多いですから、親が自由に使ってしまうかもと不安に思うかもしれません。
そんなときには、「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」を活用がおすすめです。

教育資金、結婚・子育て資金等の贈与税の非課税制度

「教育資金の一括贈与」は、30歳未満の子や孫への贈与で1500万円まで(学校以外は500万円まで)の非課税枠があります。
「結婚・子育て資金の一括贈与」は、18歳~50歳までの子や孫への贈与で1000万円まで(結婚は300万円まで)の非課税枠があります。
子や孫名義で金融機関の専用口座を開設して、金融機関が資金管理をしてくれ、教育資金や結婚・子育て資金以外では引き出すことができないため、親が自由に使ってしまう不安がなくなります。
ただ、この制度には期限があります。
今回の改正で「教育資金の一括贈与」は2026年3月31日までの3年延長、「結婚・子育て資金の一括贈与」は2025年3月31日までの2年延長が決定しました。
相続対策で生前贈与を検討している方にとって、2023年はとても重要な年になります。
いずれの生前贈与を使うかで相続対策の結果が大きく変わります。
すでに暦年贈与を行っている方も、現在の方法を見直し、きちんと相続対策になっているかを考えてみましょう。

相続対策


プロフィール

氏 名  渡辺 美智代
1966年 神奈川県横須賀市生まれ横須賀育ち
ファイナンシャルプランナー オフィスまみぃ代表
横須賀市とその周辺の地域を中心に個別相談・相談会・セミナー講師をしている。終活カウンセラーを取得してからは、葬儀会社と連携し、葬儀後の各種手続きのサポートも行う。
実績
横須賀市の弁護士・税理士・行政書士・社会保険労務士と「横須賀知恵袋」という団体を作り、月1回の無料相談会を開催
その他の事業
「起業ママ支援ユメノタネプロジェクト」
「ファイナンシャルプランナー資格活用塾FP+」
「介護・相続サポート窓口」 他


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