高齢者ドライバーと事故のリスク【親の安全】

連載コラム

秋の交通安全運動の実施

今年も秋の全国交通安全運動が9月23日~30日まで行われ、交通安全の目的・目標は
1.子供と高齢者をはじめとする歩行者の安全確保
2.夕暮れ時と夜間の交通事故と歩行者等の保護など安全運転意識の向上
3.自転車の安全確保と交通ルールの厳守、徹底
4.飲酒運転等の悪質、危険な運転の根絶
5.二輪車の交通事故防止
で、一人でも交通事故の加害者や被害者に遭わない様にするための運動が実施されました。

交通安全

高齢者ドライバーと事故のリスクについて

警視庁の調査では75歳以上の運転免許保有は500万人を越え年々増加しています。
それに伴い交通事故件数が増えることが懸念されます。
一言で高齢者といっても個人差もありますが、一般的な特性の中で視力を中心にお話します。

1.静止視力と動体視力

静止視力とは、止まっている物を止まった状態で見る場合の視力であり、動体視力とは、動きながら動いているものを見る場合の視力のことです。
車を運転する時は動体視力が重要であり、一般的には静止視力より低下します。
車で動いている場合は、視線を注ぐ時間が短くなり、注意力が分散し、見落としや見間違いが生じやすくなります。スピードが速くなればなるほどこの傾向が大きくなり、運転による肉体的、精神的疲労も影響します。
特に、加齢によって視力は低下し、静止視力より動体視力の低下が大きいと言われています。

2.視野

一般的に人の視野は、両眼で200度ぐらいといわれていますが、車を運転している場合、速度が速くなると視野の範囲が狭くなり、交通状況の情報をキャッチする能力より下がり、危険予測能力も低下するのです。

3.明度の差視力

高齢者は若い人と比べ小さなものが見えにくくなっており、運転中は、薄暗い時に歩行者を見分けにくい時があります。薄暮時は照度の差によりその対象物が見えにくくなることから、早めのライトの点灯が必要です。

高齢ドライバー

4.順応力と幻惑

① 順応力
高齢者と若者を比較すると、運転中に暗いトンネルに入ったり、トンネルから明るい場所に出る時に、眼が明るさや暗さに慣れるまで順応が遅れてしばらくの間見えにくくなる傾向があります。眼が順応するまでは、スピードを落とすなどの注意をする必要があります。

② 低照度と視力
中高年層になると明るいところでは物は見やすく、暗いところでは物が見えにくくなり、特に夕暮れや夜明けの運転は多大な影響があるので十分注意が必要です。

③ 幻惑
夜間対向車のライトを直接眼にしたとき、眩しさのために一瞬暗くなり視力を失った状態になったことはありませんか?これが幻惑です。幻惑されると元の視力に回復するまでには3~10秒かかると言われていますが、特に高齢者はこの幻惑状態に陥りやすくなるので特に注意して運転する必要があります。

ある苦い思い出

私が経験した高齢者の交通事故のお話をします。私が交通の仕事に携わっていた時の話です。
全国交通安全の初日、心地の良い晴天でした。交差点において警笛で注意喚起をし、1時間の街頭配置が終る時でした。直進の車が赤信号で停止して、右折の矢印の信号が出ている際に、まだ歩行者信号は赤色なのに高齢者の方が横断を始めたのです。すると、矢印の信号で進行して来た高齢者の運転する普通トラックが、横断歩道を渡っていた歩行者の発見が遅れ、歩行者を約20メートル跳ね飛ばしてしまったのです。まさに一瞬の出来事で、私は成すすべが無かったのです。応急処置をするとともに救急車の到着を待つのですが、歩行者は意識も無く徐々に脈拍が無くなっていくのを感じました。誰も自らが交通事故を起こそうと思って事故を起こすのではないのです。交通人身事故を起こした加害者、被害者共に待っているのは深い悲しみだけだったのです。

高齢ドライバー 交通事故

ご家族で是非話し合いを

いかがでしょうか。加齢は誰にでも起こりうることですが、ここに挙げた他に体力、精神面も変化することを理解していただきたいのです。
今、お話した事に該当するご両親をお持ちの方、高齢者のドライバーの皆様
車は生活に必要な足であり、生き甲斐だったり、プライドだったりしますが、自動車事故は最悪の場合、死亡事故を起こす可能性があり、順風満帆の人生が一変してしまうのです。
高齢者が車を運転する理由と責任(家族も含めて)について話し合ってみて下さい。また、車を使わない生活についても同様に話すことが大切です。

高齢者 家族 話し合い


プロフィール

氏 名  小川 隆浩
1957年熊本県八代市生まれ
1975年 警視庁入庁
2017年 42年間勤務した警視庁を退職
現職時代は地域課、警務課、交通課、刑事課、組織犯罪対策課などにて数多くの功績をあげる。
退職後は荒川区役所生活安全課で防犯啓発指導員として、各種イベントにおいて防犯講話を実施して特殊詐欺等の抑止活動に従事。
現在は行政書士SR法務事務所にて行政書士として活動中。


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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