喪失感を癒す【親と繋がる】

連載コラム

家族や知人の死去がもたらす喪失感は大きなストレスとなる

お彼岸が過ぎ、だんだんと日が長くなってきて本格的な春の訪れを感じるようになりましたね。
皆様はお彼岸にお墓参りに行かれたでしょうか。お墓が遠くて行けなかった方も、すでに亡くなった家族や知人に思いを馳せて懐かしむ時間を持ったでしょうか。

誰にでも必ず訪れるのが「死」ですが、残された周囲の人の喪失感は相当強く大きな心的負担となります。
1967年に社会学者のトーマス・ホームズと内科医のリチャード・レイが、精神的不調の原因となったストレス項目を調べて点数化し、強度の順位付けを行った「社会的再適応評価尺度」というものがありますが、その中でも1位:配偶者の死 5位:家族の死 17位:親友の死 と、「死」に関するものは高順位になっています。
高齢になればなるほど周囲で亡くなる方が多くなりますので、親世代は喪失感のストレスを受けやすい状況にあるといえますね。

高齢者 家族や知人の死去がもたらす喪失感

喪失感が癒やされるにはステップが必要

親世代に限った話ではありませんが、親しい人の死去でもたらされた喪失感が癒されるには心身ともにステップが必要です。おおまかに説明すると

・ショック、驚きの時期(現実を受け入れられない、泣き叫ぶまたは逆に感情が感じられなくなる)

・怒り、後悔、寂しさの時期(どうして自分をこんな目にあわせるのかといった怒り、ああすればよかったという後悔、もう一度会いたいという寂しさ)

・諦めの時期(本当にいなくなったのだと少しずつ認識)

・立ち直りの時期(自分は前を向いて頑張って生きていこうと思える)

の四段階があり、それぞれの時期に思い切り感情を出し切ることで次のステップに進んでいきます。相手との関係やその人の性格により、どの段階がどれくらい時間がかかるかは一概に言えず、次のステップに進んだと思えばまた逆戻りしてしまったりと行ったり来たりを繰り返すこともあります。いずれの段階でも「今はこういう時期なのだ」と自分も周囲も納得して気持ちを吐き出したり、聞いてあげることが大切になります。無理に元気になろうとせず、元気にさせようとせず、悲しいときや寂しいときはその気持ちに浸りきったほうが徐々に次のステップに移行していけるのです。

この感情のプロセスは「死」に直面したときばかりではなく、失恋や受験の失敗など、自分の思い入れが強かったものを失ったときにも同様の段階を経ていきます。焦らずにショックや悔しさ、孤独感を受け入れたほうが立ち直りも早くなるようです。

高齢者 悲しみを癒すステップ

親世代が一番恐れること

上記の心の回復ステップですが、子供世代と親世代ではやはり親世代のほうが時間がかかる傾向があります。それはおそらく「死」そのものが漠然としていてまだ先の事と思える子供世代に対し、親世代の場合は「次は自分の番では」という恐怖感が伴うからだと思います。

「どこどこの〇〇さんが亡くなった、△△さんも病気になった」という話が多くなってきたら「またそんな暗い話ばかりして!」などと否定せずに「そうなんだ」と話を聞いてあげてください。同じ話ばかりされることもありますが、それは自分に言い聞かせつつ気持ちの整理をして、死への恐怖感や喪失感を癒そうとしている段階なので、何度でもただひたすら聞いてあげることをおすすめします。

高齢者 悲しみを癒す

お彼岸の時期は特に今まで亡くなった方のことを思い出すでしょうから、気持ちが落ち込む親世代も多いかもしれません。そんな時こそ「もっと暖かくなったら温泉に行こう」といった楽しいイベントを企画して、未来に生きる希望を持たせてあげてほしいと思います。


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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