「ボケた?」の一言が詐欺被害を拡大するかも…【親と繋がる】

連載コラム

手口が進化する高齢者狙いの詐欺

高齢者を狙った詐欺事件が後を絶ちません。しかも手口がどんどん巧妙になっているようです。
以前、知人から伺った話ですが、ある日知人の母親に「〇〇(知人の名前)だけど」と電話がかかってきたそうです。「オレだよ」と言われれば「もしかして詐欺かも!」とピンときて警戒したかもしれませんが、子供の実名を名乗られたためすぐに話の内容を信用してしまったのです。
幸い、その知人は実家の近くに住んでおり、母親が電話している最中にたまたま実家に寄ったため、驚いた母親から事情を聞き、犯行を未然に防ぐことができました。
どうやって子供の実名を知ったのかはわかりませんが、個人の情報がなんらかの形で流出する可能性があるのだということは気に留めておかなければなりませんね。

スマホを操作する高齢者

詐欺被害が拡大してしまうのはなぜ?

上記の知人のように、たまたま犯行を防ぐことができればいいですが、実際はそううまくいかず、巻き込まれてしまうケースも多いでしょう。「うちの親はしっかりしているから」と思っていても油断はできません。

詐欺事件はテレビのニュースなどでも多く取り上げられていますので、親世代も知識としてその手口を認識しており普段は気を付けているでしょう。それでも被害にあう方が出てくる理由の一つに、私は高齢者の方の一般的な状況として「臨機応変の対応がしづらくなっている」ことがあると思います。

思考がだんだん固まってくる親世代は「突発的な変化」を受け入れることが苦手です。例えば、来月8日に予定されていた出来事が直前に10日に変更になるといったことは日常よくあります。しかし親世代は「来月8日」とインプットした情報を頭の中ですぐに上書きできず、変更を聞いた記憶はあっても自分のなかでは「来月8日」の予定のままになっていたりします。その傾向が強い方だと、いったん「相手は自分の子供」「この人は警察官」などと思いこむと、少々変な言動があったとしても怪しんだり疑うこともしません。

一方で、変化に対応できず失敗してしまうことを自分で認識していると、周囲に迷惑をかけてしまい、責められるかもという不安を持っている場合もあります。親世代でなにかと「息子に叱られる」「嫁に怒られる」と言う方は、そのような不安が強いのではないかと思います。その場合は「おかしい」「騙されたかも」と気づいてもすぐにSOSを出せず、時間だけが過ぎてしまった結果、被害が大きくなってしまうことが考えられます。

詐欺被害を避けるために

合言葉を決める

親に電話をかけたとき、一番最初に話す特別な言葉を決めておきましょう。一言の合言葉でもいいですし、例えば「〇〇だけど今日の朝ごはんは何食べた?」「元気?昨日何時に寝た?」など、会話の冒頭で必ず質問をすることを決めてもいいでしょう。その言葉がなかったり、質問をしない場合は名前を名乗ったとしても警戒するように話しておき、その記憶が定着するまで、なるべく頻繁に電話をしてあげてください。

電話をする高齢者

気軽に「ボケたんじゃない?」などと言わない

まだ若い世代であっても、何かしようと思いたったときにふと別のことを考えたら、最初に何をしようと思っていたのかを忘れてしまうことってありますよね。

親世代はこれが日常頻繁に起こるようになっていますが、必ずしも認知症を発症しているわけではありません。とはいえ年齢的に、認知症発症に対する不安や心配は常に持っているでしょう。

そんな中、日常の記憶違いの出来事などを「もうボケちゃったんじゃないの?まだしっかりしていてよ」とジョーク交じりであっても子供世代に言われると、「自分が気づいていないだけで、やはりそうなのかも」という不安を大きくしてしまいます。

その不安が思い込みにつながったり、緊急事態が起こったときに自分でなんとかしようとしてトラブルを隠したりする遠因になる可能性があります。

詐欺話など日常でそうそう出くわすことはありませんが、自然災害と同様、いつ何時どんな形で遭遇するかはわかりません。日頃から気を付ける心構えや、「なにかあったらすぐ相談してね」と親世代に言える関係を作っておきたいものですね。


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

facebookグループ

関連記事

おすすめ記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


コメントポリシーをお読みになった上で投稿してください。
TOP