老老介護の問題【親の心と体】

心と体のコト

老老介護を描いた映画大ヒット

ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』は2018年に動員20万人を超える大ヒットとなり、令和元年度文化庁映画賞、文化記録映画大賞を受賞するなど、高い評価を得ています。監督は信友直子さんで、東京で暮らすひとり娘の彼女が、広島県呉市に暮らすアルツハイマーを患った母を98歳の父が懸命に介護する日々を描いたドキュメンタリー映画です。
今春、待望の続編ができ、新型コロナの波が押し寄せて急変する事態がテーマになっています。一連の作品は、年々深刻化する老老介護や認知症に関する実態を浮き彫りにしました。それらは他人事ではない身近な問題として、人々の共感を集めているのでしょう。

老老介護

老老介護が増えている

老老介護とは高齢者の介護を高齢者が行うことで、主に65歳以上の高齢の夫婦や親子、兄弟などのどちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となるケースを指します。認認介護も同様に、高齢の認知症患者の介護を認知症である高齢の家族が行うことです。

厚生労働省が2019年6月に実施した「国民生活基礎調査」(全国約6300人から有効回答)では、同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護のうち、介護をする側と受ける側がお互いに65歳以上の「老老介護」の割合は59.7%と、4年前の調査より5ポイント増加しました。さらに、お互いが75歳以上の割合も33.1%と、およそ3ポイント増加しました。いずれも調査を始めた平成13年以降、最も多くなっています。

また、誰が主に介護を担っているかを調べたところ、最も多かったのは同居の配偶者で23.8%、次いで同居の子どもが20.7%、別居の家族などが13.6%、事業者が12.1%、同居の子どもの配偶者が7.5%などとなっています。

老老介護

老老介護で起きる問題

独立行政法人国民生活センターの報告「2015.2 国民生活」によれば、自宅での老老介護からさまざまな問題が起きています。
今まで家事を一切しなかった70歳代の男性が、妻の介護が始まり、「炊事、掃除、洗濯、ごみ出し、そして郵便局、役所等の種々の用事をしなければならなくなった」と、介護以上に家事の困難さを訴える人が多いのです。これは男性介護者の特徴の一つだそうです。

なぜ入浴・排泄・食事介助や移動というプロの介護と思われるような行為よりも、家事がより困難となって表れるのか。今の介護制度では、デイサービスや訪問介護等の事業を利用しながら、入浴や食事、清拭、排泄も何とか在宅でこなすことが可能になってきましたが、同居家族が居れば家事援助サービスは原則利用できないのです。そして、同居する介護者への支援については枠組みすらないのです。

しかるに、いま増えている老老介護では、これまで何不自由なくできていたことも誰かの手助けが必要になっているような「弱い」介護者が多くなっています。一律に同居家族が居れば介護サービスの利用制限ということではなく、介護される人にはもちろん介護する人にも支援の枠組みを備えることが求められます。

老老介護

介護離職者は年間10万人

監督の信友直子さんは、身内の年々深刻化する老老介護の事態に、「介護離職」「介護離職予備軍」という言葉が頭に浮かんだといいます。

離れて住む子どもたちにとって親の老老介護は避けたいところ。しかし、同居もままならぬ現状で子どもたちは、「早めに施設に入れたい。でも、二人は最期まで自宅で暮らし、施設には行きたくないと……」と思い悩んでいます。そして、思い余って親の介護のために離職する人、もしくは介護離職予備軍が出てくるのです。

総務省「就業構造基本調査」によると、2017年に介護・看護を理由に離職した人は9万9000人で、過去1年間に前職を離職した者の1.8%(介護離職率)です。同12年と比較すると、介護離職者数も介護離職率も大きな変化はなく、現在も介護離職者数は約10万人と言われます。

介護が必要になるのは70~80代の後期高齢者。介護離職はその子ども世代である40代後半~50代のビジネスパーソンに多く発生しています。明治安田生命「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査結果」によれば、介護によって会社を離れたのちに、再度正社員として雇用される人は男性で34.5%、女性で21.9%にとどまり、正社員への復帰が難しいのが現状です。介護離職による年収も大きく減少します。男性であれば転職後の年収は平均で約215万円、女性は約175万円減少しています。

介護離職者ゼロを目指す施策

「介護離職ゼロ」が政府の目標で、そのために安倍政権下では特別養護老人ホームを増やそうとしました。しかし、介護人材が不足して思うように施設を増やすことができませんでした。それで2019年からは一転、在宅介護者を増やす施策に転換しました。菅政権、岸田政権でもその施策を引き継いでいます。団塊の世代が全員75歳以上になる「2025年問題」まであと3年。その子ども世代が介護離職をせずに済むような対策が急務です。

老老介護



<親子ネクトーク〜ご両親にお伝えください〜>

子どもとして準備しておくことは、実家に近い特別養護老人ホームの所在と施設と人員についての情報収集。地域によっては特別養護老人ホームの入所まで1年、2年待ちはざらというところもあります。場合によっては実家から離れたホームへの入所を決断しなければなりません。それには、在宅での無理のない老老介護が両親に可能なのか、ふだんから親と率直に話し合える環境を整えておくことも大事です。そして何よりも大切なのは両親の意向を尊重すること、気長に説得することです。必要に応じて、専門家のケアマネージャーに相談することも頭に入れておきましょう。

●特別擁護老人ホームの情報収
●施設入所は両親の意向を尊重し、気長に説得する
●老老介護が可能か、ケアマネージャーに相談する


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