あえて言わない優しさ【親と繋がる】

連載コラム

勘違い、物忘れは日常のことである親世代

先日、自分は親と離れて生活しているけれど、きょうだいが実家のすぐ近くに住んでいるという方のお話を伺いました。

親に何かあってもすぐに頼れる人が近くにいるのは安心ですが、最近実家に行ったとき気になったことがあるそうです。それはきょうだいが、ちょっとした親の勘違いを即座に否定し訂正することでした。
たとえば、親が気に入っていつも買っているレトルトカレーを「スーパーに行ったらこんな商品があって、おいしそうだから初めて買ってみた」と話す親に「それはいつもと同じもの!普段食べているのを忘れちゃったの?」ときょうだいが即答したそうですが、実はパッケージが期間限定キャンペーン企画で通常と変わっており、親にとっておなじみの包装ではなかったので、違う商品と勘違いしてしまったようでした。
それ以外にも有名人の名前とか、昔行った場所など親が間違えるとすぐ訂正するので、親も少し口ごもるようになり、このままだと話をしづらくなるのではないかと心配になったそうです。

私達でも日常、ちょっとした記憶違いや物忘れすることはありますので、親世代であればその頻度はさらに上がるでしょう。しかも世の中のサービスなどがどんどん変わっていて、新たに覚えたり対応しなくてはいけないことだらけですからよけい混乱しますよね。

高齢者 勘違い 物忘れ

すぐに訂正したくなる子供の気持ち

この話だけ聞くと、きょうだいの方が意地悪とか、心が狭いような印象になりますが、私はそのようには思えませんでした。

実際問題として、自分の生活に加えて親の日常のサポートをすることは心身ともに負担が大きくなりがちです。まして家族と思うとお互い甘えが出ますから、言葉を選んだり遠慮したりという配慮もせず、ついイライラした気持ちを出してしまうことがあっても仕方がない部分もあると思います。

そして責任感が強く「自分がしっかり親の面倒を見なくては」と自身を追い込むタイプの方であればあるほど、親が認知症になってさらなる負担を背負うことに不安を感じているため、親のちょっとした物忘れなどに敏感に反応してしまうケースがあります。また、親が老いていく姿を認めたくなくて「しっかりしてよ」と鼓舞する気持ちが強すぎる場合もあります。

離れて暮らしていると、日々の「親の老い」を目にすることがない分、プレッシャーはあまり感じないかもしれませんね。

高齢者 勘違い 物忘れ

あえて指摘しないのも優しさ

言いたくなる気持ちも理解できますが、戸締りや火元確認、金銭管理など命や生活の根源にかかわることでなければ、親が話すことは勘違いや物忘れがあるものとして、あえて指摘せずに流していていいのではないでしょうか。
言ったところで改善するのは難しいでしょうし、お互いにいい気持ちがしないならスルーするのも老いを受け止める優しさだと思います。

また、そういった気持ちの余裕を持てるとしたら、普段離れて生活しているからともいえます。
もし親が「あの子はものの言い方がきつい」などと近くに住むきょうだいに対して不満を言ったら、状況にもよりますが「自分の生活にプラスして親の面倒も見ていて心身ともに精一杯頑張っているから、きついのではなく余裕がないだけだよ。」というように、親の気持ちを受け止めつつ、きょうだいとの間の潤滑油になる役割をしてあげてください。

たまにしか直接親に会えないのならなおさら、会っているときは家族みんな笑顔で過ごせるといいですね。

高齢者 家族 笑顔


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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