心配という愛情【親と繋がる】

連載コラム

親には感謝しているけれど優しくはできない気持ち

ゴールデンウイークも終わりに近づいていますが、旅行も兼ねてご実家に帰られた方もいらっしゃったかと思います。
長期休暇が近づいてくると、カウンセリングのご相談に「子供時代の出来事で、今でも親を許せないことがある。親には基本的に感謝しているし高齢にもなってきたので優しくしたいと思ってはいるけれど、会うと恨みの気持ちが先に立ってしまう」といった内容のものが毎年寄せられます。

例えば、子供の時やりたかった習い事をさせてもらえなかった、学校で流行っていたゲームを買ってもらえず仲間外れになった、高校や大学進学は親の希望する分野、学部に限定された など、自分の意思や気持ちを親に聞き入れてもらえなかったために自分が辛い思いをしたという経験があり、大人になった今でもその感情がくすぶっていて、素直に親と話ができない。確かにそんな思いをずっと持ち続けるのもスッキリしませんよね。

現在親と離れて暮らしている子供世代の方にも同じような経験があり、早く親の「支配下」から逃れるべく、あえて実家から遠い進学先や就職先を選んだという方もいらっしゃるかもしれません。

親の支配

親自身がどう育てられたかの影響

一般的な話として、子供の幸せを望まない親はいないでしょう。それなのに子供に辛い思いをさせてしまった親世代には、彼らが自分の親にどう育てられたかの影響が大きいと思います。

今よりも狭い世界の中で育ち、兄弟姉妹も多いうえに家長制度の名残で親は絶対的な存在であった時代の子供だった親世代は、自分の意見を持つより親や周囲の意見に従い「周りに迷惑をかけるな、自分は我慢してでも人様のお役に立つようになれ」と教えられた方が多かったでしょう。

そのため男女ともに厳しく育てられ、やがて周囲のすすめにより結婚して親になったとき、自分がこう育てたいというより「正しい道からそれては子供が不幸になる、世間から後ろ指をさされないように親としてしっかり教えなくてはならない」という心配、不安も抱えながら子育てしていたのではと思います。

不安、心配という形の愛情表現

時代背景も影響し、おそらく自分に対する自信や自己肯定感を高く持ちづらかったであろう親世代は、子供が可愛いからこそ辛い思いをさせてはならない、他人に立派だと認めてもらいたいと思うあまり、一般的な「理想の子供像」にとらわれすぎた方も多かったかもしれません。
そのため、理想と合致しない子供の言動に対しては愛情のなかの不安要素が強くなり、それを否定し、「あなたのために」と説き伏せて安全な場所に子供を留めておこうとしたでしょう。結果、子供の可能性を摘んでしまうこともあり、子供がそれを恨むのも理解できます。

しかし、それは親の育った価値観のなかでの精一杯の愛情だった、ただ表現の仕方が不安や心配という、子供には伝わりづらい形であったのだと思います。

親の不安

親も不完全で不器用な人間であると受け止める

病院などに行くと、高齢で動作がゆっくりしている親に対しイライラして「早くして」などと怒っている子供世代の方を見かけます。
その怒りも子供世代の「いつまでも元気で頼れる親でいてほしい」という願いからで、弱ってきている親が心配で不安になる気持ちの表れなのだと思います。

親も子供もお互いが描く「理想の状態」であってほしいと思うあまり、その状態と違う部分があると正そうとしたり反発したりしてしまいますが、親は自分以上に不器用で未熟なまま親になったためなにかと不適切な対応はあった、でも愛情もあったのだと受け止めて、親の言動を許せたら、自身の心のなかにとどまる気持ちのくすぶりが少し消えてくるのではないでしょうか。

親の愛情

もし今後親と話す機会があったら、親の子供時代の話を聞いてみてください。昔は許せなかった親の言動を理解する一助になるかもしれません。


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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