口が動くとこころも動く【親と繋がる】

連載コラム

人と話をしない毎日が続くと・・・

先日、看護師の方とお会いする機会がありました。その中で「最近は季節に関係なく、食べ物が呑み込めなかったり誤嚥(ごえん=食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと)を起こす高齢の患者さんが増えたように思う」という話が印象に残りました。

お正月に、お餅を喉に詰まらせてしまったというニュースはよく見ますが、呑み込みづらいお餅ではなく普通の食事でも起こっているそうです。
親と離れて暮らしていると、そういった緊急事態にすぐ対応できないのが心配ですね。
看護師さんは「コロナ禍で外出を控えたり人と会わないようになって、話をする機会が減ったことにより口周りの筋肉が衰えてしまっているのかもしれません。」とおっしゃっていました。

私達もマスクをする生活が2年以上続いて、気づくと顔のほうれい線がくっきりしていたり、口角が下がって不機嫌そうな表情になっていて驚くことがありますよね。マスクで隠していると「人に見られている」という緊張感もなくなります。やはり普段から意識して顔の筋肉は動かすようにしなければと自分に言い聞かせました。

筋肉の衰え

話をしないことは精神面にも影響

とはいえ、子供世代の私達は仕事や家庭生活を通じて「人と話をする機会」が親世代に比べれば多いでしょう。
人との新しい出会いがなくなってくる親世代は、家にこもっていれば誰とも口を聞かず、話をせずに一日終わるという方も多いと思います。
そんな生活が長くなれば、それこそ重力に従い口角も下がってくるでしょう。
よく「高齢になると怒りっぽくなる」と聞きますが、もしかすると周囲の人がその表情を見て「この人不機嫌そう、怖そう」と感じて接触を避けることにより「無視された」「適当に扱われた」などと思い込み、怒りを生じている方もいらっしゃるかもしれませんね。

 また、人と話をしなくなると周囲の出来事に対して関心も薄れ、なにかに感動したり悲しんだりといった、心が動かされることもなくなってくるので、さらに表情が乏しくなってしまいます。
もちろん他人と話をしなくても生活はできますが、高齢者の場合は特に孤立感や不安を感じ、うつ病や認知症発症のきっかけにつながる可能性もありますので、あまり長い間周囲の人と会話しない状態が続くのは好ましくありませんね。

シニア 孤独感

口を動かすことは心身ともにメリットがある

会話を通じて顔や舌の筋肉を動かすことは前述の誤嚥防止にもつながりますが、相手の話の内容を理解しようとしたり、気持ちを読み取ったり、自分が思ったことを言語化するなど脳の活性化に役立ちます。すると脳の血流も増えて認知症の予防にもなります。
感情面でも驚いたり喜んだりといった刺激を受けるでしょう。

また現在、様々なアンチエイジングの研究がなされていますが、「家族や友人との会話の頻度が多い高齢者ほど健康状態が『良い』と感じている」という調査もあります。
人との交流と健康長寿との関連  引用:健康長寿ネット

その点からも、離れて生活している親世代とはなるべく話をする機会を持ってあげたいものですが、忙しいとなかなかそうもいきませんよね。

もし、あまり人付き合いがお好きではないご両親で、会話のなさが心配になるようであれば、新聞でも本でも、なにか音読することをおすすめしてはどうでしょうか。表情筋のトレーニングになりますし、読んでいる内容を理解したり、背景を想像したりすることで脳や心にも刺激を与えることができるでしょう。

シニア 音読

口を動かすことで心身の健康をキープし、より生き生きとシニアライフを過ごしていただきたいですね。


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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