なぜか運転免許証返納には頑なに応じない親世代
最近、高齢者が起こす交通事故のニュースが注目されています。ニュースを見て運転免許証を返納する親世代も増えた一方、子供世代の再三のお願いにもかかわらず、返納を拒む方も多いようです。
他人の介助を必要とせず、基本的に自分の力で生活できている親世代にとっては、高齢者とひとくくりにされて免許証を返納しなさいと言われるのは納得がいかないでしょう。
とはいえ、車の運転は相当な集中力と瞬発力、判断力が必要なので、そういった能力が衰えてきがちな親の運転を子供が不安視する気持ちも理解できます。事故を起こしたときの様々な代償が大きすぎるのも心配のもとですね。
最近よくお聞きするのは、他のことなら柔軟に理解や対応ができるのに、運転だけはやめない!と頑なな態度をとる親世代と子供世代がもめてしまうという話です。
どうして親世代は、車の運転にはこだわってしまうのでしょうか。
親世代が心理的に反発してしまうポイントとは
自家用車の利用頻度、必要性については、お住まいの地域の状況によってかなり違うために一概には言えませんが、親世代が車の運転にこだわってしまう心理的なポイントは以下の2点にあるように思えます。
・慣れている生活習慣を変えるのが億劫
引っ越したとき、近くにあるスーパーや銀行、郵便局など日常生活に必要な施設を探しだすのはそれなりに手間も時間もかかりますよね。生活の場を変えることは誰にとっても慣れるまで大変です。
親世代ならなおさらで、街中がどのように変化していようとも、なじみのお店や通り慣れた道を利用するほうが安心です。親世代にとっては「変えること」が想像以上に大きなストレスになるので、極力避けたいという思いが強いでしょう。
・子供に意見されたくない親のプライド
子供のころ、親に勉強や習い事を教えてもらうとよくケンカになりませんでしたか。
自分の子供だから「できるだろう」という期待と「できるようにさせたい」という熱意が高くなりすぎて、親が必要以上にダメ出ししてしまい、かえって子供のやる気をそいでしまうためですが、そんな親世代は心のどこかで「子供より親の自分のほうが上である」という思いを持っています。かつての家父長制度の教えの名残でしょうね。
そのため「自分より未熟な子供」の言うことに素直に従う気にはならないでしょう。まして自分は頭も身体もまだ衰えていないという自負があれば老人扱いされているようで面白くなく、子供の意見に耳を傾けようとはしないのだと思います。
少しずつ返納モードに変えていくために
現在は頑なに運転をやめない親世代であっても、この先ずっと自分が安全運転できるとまで信じている方はそう多くないと思われます。
親世代の抵抗感を少しずつ弱め、免許証返納モードに持っていきたいときは、以下のことを試してみてください。
・他の交通手段やお店などを探して一緒に利用してみる
たとえ住み慣れた町であっても、行ったことがないところや知らない場所に一人で行くのは高齢者にとって不安なことです。
ある方は、最寄り駅から自宅までの距離が遠いので電車の利用は無理と思っていましたが、実は隣町の駅から出ているバスの停留所が自宅近くにあることをたまたま近所の方から教えてもらい、電車利用が楽になったそうです。
親世代が自ら新しいスーパーや利便施設を探しあてるのは難しいので、代わりに子供世代がネットなどで車を使わずに生活する手段を調べてあげて、実家に行った際に親と一緒に利用してみましょう。
車の利用をゼロにするのは難しいかもしれませんが、乗る回数を減らすことができればその分事故の可能性も少なくなりますし、そのうち慣れてくれば「車がなくても生活できる」と思ってくれるかもしれません。
・「こちらの方がお得」と実利に訴える
上記のように「親のほうが子供よりエラい」と思っている親世代に、正論や「心配だから言っている」といった感情論は響かないでしょう。
むしろ「車を保有するよりもコストがかからない」「運転の姿勢は腰痛を悪化させる」といったように、「運転しないほうがなにかとお得だよ」といった実利に訴える方向でのアプローチがよさそうです。人生100年時代といわれていますし、親世代はお金や健康に関心が高いと思われるので、精神論で説得するより検討してくれやすくなるでしょう。例えば公共交通機関だけではなく、タクシーが呼べる地域であれば、自動車税や車検、ガソリン代など含めるとタクシー利用のほうが安くすむかもしれません。親がタクシー利用に慣れていないようなら、タクシーチケットやプリペイドカードをプレゼントして、実際に使って便利さを体験してもらってもいいですね。
お住まいの地域上、どうしても車の運転が必要なら、カーリースで最新の自動ブレーキ装置付きの車を利用するという手段もあります。事故を防ぐという点では少し安心できますね。
当サイトには高齢者向けの買い物サービスなどが掲載されている記事もあります。そういったサービスの使い方を説明したり申し込んであげるのも、離れて住む親にできる親孝行のひとつと思いますので、ぜひそちらもご覧になってみてください。
買い物難民を救え【親の生活】
https://anshinnavi.jp/column/life/l-001/
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
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