堪忍袋にも穴があく【親と繋がる】

連載コラム

暑さでイライラ、さらに心配事が増えると・・・

もうすぐ9月。暦の上では秋なのにとてもそうは思えない暑さが続いている地域が多くあります。それに加えて立て続けに台風が列島に接近、横断していったり各地で大きな地震があったりと防災面も注意しなくてはならず、なにかと心配なことが多いこの夏です。

こんなときは誰でも心身ともに疲労がたまるゆえ、イライラするしやる気がおきなくなるでしょう。自分なりのストレス発散法があればいいのですが、高齢の方は心配事が増えるにつれ感情の整理ができなくなると、周囲の人に怒りをぶつけたりふさぎ込んだりしがちです。
親と離れて住んでいると普段の生活が見えない分、そういった気持ちの浮き沈みに気づくのが遅くなるかもしれませんね。

ふさぎ込む高齢者

身体と同様、心の強さもだんだん衰えてくる

先日ある集まりで、お父様の癇癪がひどくなりお母様に八つ当たりを繰り返していたら、お母様がひどく落ち込んでしまい鬱状態になってしまったという話をお聞きしました。
その方いわく、お父様が庭先で転んでしまい、痛みがとれず動きづらくなった自分に対して苛立っていることに加え、お住まいの地域が地震や豪雨に見舞われたことで自力避難ができるか不安を強めたようで、傍にいるお母様に八つ当たりを繰り返していたそうです。
以前から怒りっぽい父親と、それを聞き流す母親を見ていたその方は「いつものこと」と思って気に留めていなかったのですが、久々に実家に行ったら母親の顔に生気がなく「もう死にたい」と言われて驚き、病院に連れて行って鬱状態であることがわかったとのことでした。

お父様はいつでもなんでも聞いてくれる(と思っている)お母様に少し甘えすぎたかもしれません。八つ当たりをしたほうは一時的にスッキリしますが、されたほうはそのネガティブな感情をうまく発散できないと溜め込んでしまいます。
親世代の女性は「女は結婚して夫に従うもの、我慢は当たり前」と教えられて育った方が多いですが、私は身体同様に人の心も年を取り弱ってくるものだと思います。以前は我慢して受け止められていたことが、だんだんその許容できる量が少なくなり自分では消化しきれなくなっていくように感じます。堪忍袋も経年劣化をおこして綻びが出てくるのでしょうね。
一方で、男性は以前のとおりすべて妻が自分を受け止めてくれるのが当たり前と思っているため、このような齟齬が生じるのでしょう。

八つ当たりする高齢者

子供が双方の気持ちを汲みとる

家族に対して怒りっぽい方というのは、外で自分を押し殺し我慢してきたことが多く、年齢を経て感情の抑制がきかなくなるとさらに怒りが強くなってきます。

こういったケースは子供が間に入り、父親には「足が痛いし不安だよね」と気持ちを受け止めて理解を示しつつ、「でもお母さんに怒っても足は良くならないしお母さんが辛くなるだけだよ」と、八つ当たりは控えるよう伝える一方で、母親には「お父さんのお世話頑張ってるよね」と労い、こちらも気持ちを認めたうえで「また八つ当たりされたら、お父さんに自分が注意するからいつでも言ってきて」と、片方が我慢しすぎないようにサポートしてあげてください。

高齢者の気持ちを受け止める

どんな方でも「理解してもらえた」と感じると安心して感情が安定します。離れて住んでいても、親に「安心」を届けてあげられるといいなと思います。


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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