悪口を言いながらもはつらつとする不思議
先日お会いした親世代の方から聞いたお話です。
その方は高齢者が集まるある団体に属していて毎週活動なさっているのですが、その中のお一人が突然、お隣に住む方の悪口をこぼすようになったそうです。内容は「庭の落ち葉を掃除しないでほったらかしにしている」「回覧板を回すのが遅い」「スーパーで顔を合わせても挨拶しない」といった、日常のささいなことがほとんどなのですが、毎日何かしら憤慨する出来事があるようです。ストレスがたまっていきそうなのに、なぜかその悪口ばかり言う方は最近てきぱき行動するようになって、以前よりも生き生きしてきたのが不思議だということでした。
悪口に意外な効果
一般的な正論は「人の悪口を言ってはいけない」「お互い様の精神で寛大な心を持つべき」ですし、感情にまかせて相手を攻撃するようなことはもちろん避けるべきでしょう。
という前提を踏まえてですが私はそのお話を伺って、もしかすると生活にあまり変化のない親世代には自分の快適さを脅かす「仮想敵国」のようなものがあったほうが、生活に緊張感が持てて生きるエネルギーを生むのかもと感じました。
地域の集団生活のなかで他人と関わったり、関心を向けているからこそ相手の行動に対する不満に気づくわけですし、自分を不快にするものや状態にどう対応するかで精神面は活性化を図っているともいえます。そう考えるとマイナス面ばかりではないのかもしれませんね。
そしてこの話には続きがあります。
悪口ばかり言っている方に「きっとお隣さん、足腰や耳が弱ってきているのよ。私達は普段からみんなで鍛えているから元気で良かったわね」「年を取ったらみんなそんなもの。我慢、我慢!」などと周りの方たちが口々に言っていたら、より元気が出たのか「今日はお隣さんより朝早く起きて庭掃除してきた」などと嬉しそうに話すようになったそうです。
「お隣さんより元気な自分」が誇らしくて軽くマウントを取っているのかもしれませんが、実際のお隣さんはそのことを知らないわけで、相手をイヤな気分にさせていないならそれも健康法の一つと思ったということでした。
正論より『我慢』が受け入れやすい
皆様も親と話していて「周囲の悪口や愚痴が多いな」と感じたことがあるかもしれません。
高齢になると自分の考えやルールに固執し、柔軟性が失われてくるのは誰にでも起こりえるのである程度は仕方ないことでしょう。
そんな時、無理に「正しさ」を押し付ようとすればケンカになり、お互いイヤな思いをします。ならば親世代の方が慣れ親しんでいる「我慢」を持ち出し「怒っても我慢できてるのが〇〇さんよりすごいよね」などとひそかな優越感を持たせてやり過ごしたほうが親の気持ちもおさまりやすいかもしれません。
正しい「悪口への対応」ではありませんが、それが親の元気のもとになるなら、たまに話を聞いてあげつつ見守ることもあっていいかなと思ったお話でした。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
コメント