「いくつに見えますか」の問いかけの裏【親と繋がる】

連載コラム

あいさつ代わりの「いくつに見えますか」

先日、老人ホームに勤務している方から伺った話です。

あるホーム入居者の方が、今までそんなことを気にしている風には見えなかったのに突然、お掃除や食事作りに来るパートさんなど初めて会う人に挨拶がわりのように「自分がいくつに見えますか?」と聞くようになったそうです。
そういった質問を受けたとき、だいたいの人は最初に感じた年齢からいくつか差し引いて若めに答えることが多いと思いますが、その方もほとんど実年齢より若い答えが返ってきているようで「実は〇〇歳なんです」と嬉しそうに話していらっしゃいました。

女性の場合、若くても外見上の悩みから年齢を気にすることはありますが、高齢者になると男性女性関わらず、自分がいくつに見られるのか気にする方がいらっしゃるようで、お話聞かせてくださった老人ホーム勤務の方は「美意識が高いのだろう」と思っていたそうです。

年齢を気にする高齢者

問いかけの裏にあるもの

40,50代であれば「他人から実年齢より若く見られた」と喜ぶ気持ちも理解できますが、その話を聞いた私は「例えば80歳の人が75歳に見られたとしたら、そんなに嬉しいものなのだろうか。」と不思議に思いました。

すると話の続きがありました。お仕事でホームの各部屋を見廻る際、年齢を聞く方の部屋が少しずつ散らかってきているのに気づいたそうです。「よろしければ片付けをお手伝いしましょうか」とお声がけして一緒にお部屋をきれいにしたのですが、心なしかその方の動きが以前よりゆっくりしているように見えて、「もしかすると周りに年齢を聞くのは、漠然と体力の低下や体調不良を感じていて、それに対する不安の表れなのかも」と思ったそうです。

どこか身体が痛いとか、明らかな不調はなかったとしても、その方は自分に「老い」がゆっくりと進んできているのを感じ取っていて、「年齢より若く見られる→自分はまだまだ元気なのだ」と確認したいのかもしれませんね。

高齢者 体の不調徐々に「老い」と向き合う
自分の親から「まわりから〇〇歳に見られた」「年齢を言ったら驚かれた」といった話が多くなってきたら、それはそれで「よかったね」と肯定してあげつつ、家事が辛くなってきていたり庭いじりが面倒になってきているといった、ちょっとした体力の衰えが進んでいないか気をつけてあげてもいいかもしれません。

老化は誰にでも訪れることですが、そのスピードは一人ずつ違いますので早めに気がつき、少しずつ備えておけば、ある日親が突然転倒して怪我してしまったといった事故などにつながる前に対策ができそうです。

親にはいくつになっても若々しくいてほしいものですが、見えないところで徐々に進む老いも受け入れながら、いつまでも元気で過ごしてほしいですね。

元気に過ごす高齢者


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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