カリフォルニアから来た娘【親と繋がる】

連載コラム

「カリフォルニアから来た娘症候群」とは?

高齢者が持病などで入院した際に、医師や病院関係者を困惑させる「カリフォルニアから来た娘」の存在をご存じでしょうか。

上記は「これまで高齢の親と疎遠な関係にある遠方の親族が、終末期医療の場面でそれまで近隣の親族や医療チームと時間をかけて築き上げてきた合意を覆し、そのケアに異議を唱えたり、患者の延命治療を強く求めたりする状況」を指すたとえで、「カリフォルニア」は「遠方(往々にして都会)」の比喩、「娘」は女性と限らない親族の比喩で、Wikipediaによると「怒りっぽく、自己評価が高く、明晰と自認し、情報通を自称する特徴がある」そうです。
余談ですがカリフォルニアでは「ニューヨークから来た娘」「シカゴから来た娘」と、遠い東海岸の都市で呼ばれるのが面白いですね。

カリフォルニアから来た娘症候群

「親のため」より「自分が納得したいから」

カリフォルニアから遠い日本でも同様のことが起こっているようです。

先日お話した医師の方が勤務している病院でも、患者さん本人と話して治療方針を決定しすでに治療開始しているのに、突然遠方に住む子供がやってきて、ネットや本などで仕入れた情報をもとに「この薬を使って、こっちの療法にして」と要求されることが多々あるそうです。
患者さんは「息子(娘)がそう言うなら…」と方針変更に同意することが多いのですが、医師目線で考えるとその薬や治療法で延命はできても苦痛が伴ったり、持病の関係上他の臓器に副作用が出たりなど、患者さん本人にとってベストな選択なのか難しいところもあるようです。お話を伺った医師の方は「親に少しでも長く生きてほしいと思っての意見なのだろうけど、中には親のためというより自分が“親孝行した”と納得したいだけなのかもと感じることがある」とおっしゃっていました。

高齢の親が入院したとなれば子供としては心配になりますし、できるだけの治療をと願うことは当然でしょう。
しかし、それまで親の健康状態に無頓着だったり、そもそも親とあまり関わろうとしていなかったりするのに、いざ入院となった時にあわててあれこれ調べて希望を伝えても、親自身の意向を無視した判断になるかもしれません。まして今まで病気に無関心だった罪悪感を払拭したいがための言動であるなら、医療関係者はもちろん親にも身体的な負担をかけてしまう可能性があります。

カリフォルニアから来た娘症候群

いざという時に備える気持ちが大切

親に持病がある場合は特にそうですが、普段から健康状態について親に話を聞いておき、入院するような事態になったときはどんな治療をどこまで望むのかを確認して、親族で共有しておいたほうがいいでしょう。これについては正解がないため、親本人が「どのように病気と向き合いたいか」を最優先に考慮してある程度決めておくことをおすすめします。

親が高齢であればあるほど、日頃から「明日何が起こっても後悔しない」と思えるくらい親とコミュニケーションをとっておくことで、「いざ」という時に医療従事者の意見も聞く余裕ができ、親子双方にベストな治療の選択ができるのではないかと思います。

親とコミュニケーション


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
一般社団法人介護予防心理美容協会 常任理事

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