一人で暮らす親を気遣う子供の気持ち
親のどちらかが亡くなるまたは施設に入居などで、残った親が一人で生活することになった場合、子供としては色々心配になると思います。
かといって離れて暮らしていると親のそばでずっとケアしてあげるのは難しいので、様々なサービスを利用するのがおすすめなのですが、時にその気遣いが逆効果になってしまうこともあります。
最近父親を亡くされ、母親が一人暮らしになった方から聞いたお話です。
長年父親の介護をしていて趣味を楽しむ時間も取れず、友達も少なそうな母親なので、家にこもって話し相手もなくうつ状態にならないか、自分のためだけに食事をちゃんと用意できるのかなど母親に対する不安が募るなか、お住まいの行政サービスで高齢者交流施設を見つけたそうです。
そこでは安価で食事や入浴もでき、色々な教室やイベントがあるので多くの高齢者が利用しており、実際母親と見学に行ってみて「ここを週に数日利用してみよう」ということになり申込をしました。
希望すれば家まで送迎もしてくれるので「これで友達もできるだろうし生活に刺激があって楽しく過ごしてくれるだろう」とその方は安心していました。
「高齢者だから」と一括りにはできない
しかしある日、施設のスタッフさんから電話があり「お母様はイベントや教室があっても全然参加しようとしない。いつも一人でポツンとしているのですが、このまま利用を続けるのがいいかのご相談です」と言われたそうです。
見学のときは母親も気に入っているように見えただけにその方は驚きましたが、そう言われると母親に電話してもその施設での出来事は全く話に出ないことを思い出しました。
そのスタッフさんがさらに母親の話を聞いてくれたところによると「自分は一人でのんびり過ごしているほうが性に合っているしストレスも感じないのだけれど、そうしていると子供にあれをやれ、これをやれとせっつかれる。自分のことを考えてくれているのはわかるから気持ちはありがたい。でも“何かをしていないと良くない”と追い立てられるのが本当は窮屈に感じる」と言われたそうです。
高齢の方に他者との交流や適度な運動、バランスの良い食事などが必要なのは確かです。
ただその取り組み方については人それぞれで「高齢者はみな同じ」ではないはずなのですが、子供のほうが「理想的なご長寿健康法」などにとらわれてそれを押し付けてしまいがちなのかもしれませんね。
親のペースを尊重することも必要
その方も「親が認知症になったらどうしよう」という不安があり、それを防ぐためにあれこれ先回りして親にすすめていたことを反省し、もう少し親のペースを尊重しようと考えなおしたとのことでした。
そして今はネット配信されている元気な母親と一緒に見ながら「この料理なら作れそう」「家の中でもこういう運動はできるね」と相談しつつ楽しんでいます。
同じくらいの年齢の方が生き生きと暮らしている姿が母親の励みにもなっているようだとおっしゃっていました。
最近は高齢化社会を見据えた生活面のサポートサービスがどんどん増えてきています。その中で親の意向を確認しつつ、認知機能の維持に役立つ働きかけを個別に考えてあげられるといいですね。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
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