親の「不満」をどう受け止める?
実際にお世話をしている子供世代の悩み
家族問題のカウンセリングのご相談で、「親の面倒を普段見ていない兄弟や親族から『〇〇してあげないなんてかわいそう』『もっとこうしてあげてほしい』といった意見を言われてしまう。自分は一生懸命対応しているつもりなのに、これ以上を求められてもつらい」というお話をよく聴きます。
実際に毎日高齢者の生活全般のお世話をするのは大変なことでしょう。はたから見ていたり、たまに会うだけではわかりえない苦労があると思います。
以前、知人からこんな話を聞きました。
その人はご実家に妹が住んでいて、だんだん自活が難しくなってきた親の面倒を見てくれているそうです。実家に帰省したとき、妹が親を立ち上がらせようとして腕をギュッとつかんで引き上げたのを見て、親が痛がったわけではないものの、その動作がやや乱暴にみえたので、「もう少し優しくそっと手を貸してあげたほうがいいのでは」と妹に言いました。
すると妹は「それはわかるけど、毎日のことなんだよ。そうしてあげたいけど時間にも気持ちにも余裕がないの。」と疲れた表情で答えたのだそうです。それを聞いて知人は妹さんに申し訳なく思うと同時に、自分が実家に行ったときだけでも親の世話を引き受けて、妹を休ませようと思ったということです。
理想はこうあるのが良いとみんなわかっていても、現実の生活ではなかなか難しいということはあるものです。
親世代の不満が向かう先は・・・
一方親世代も、生活のお手伝いをしてくれる同居家族やヘルパーさんなどに不満があっても直接言いづらい面はあるでしょう。そうすると、心を許せる相手として、離れて暮らしている子供にその思いを話すことが多くなります。
そしてそれを聞いた子供世代は、親のことを心配するあまり、親にかわって不満を相手に伝えてなんとか事態を解決しようとするかもしれません。しかし、上記の相談事例にあるように、伝え方によっては状況が好転するより悪化させるケースのほうが多いように感じます。
ましてその相手が家族であれば、「普段お世話をしているわけでもないのに口だけ出してくるなんて無責任だ」と思われ、関係がぎくしゃくしてしまう可能性もあります。
親の不満はどう受け止めるか
みんなが親世代のことを気にかけて善かれと思って行動しているのに、それがトラブルのもとになることは避けたいですよね。
そこで、離れて暮らす親世代から生活上の不満や愚痴を言われたときに気を付けておくことを挙げてみましょう。
・とりあえず否定せずに話を聴く
周囲の人の言動に対する親世代の不満は、同意できてもできなくても「そうなんだ」と一旦受け止めてあげます。
普段感じている寂しさから、話が大げさになっているケースもありますが「そんなはずはないでしょ」と子供世代が理屈で否定しても納得しないでしょう。理解してもらいたい思いからさらに話が大きくなり、被害者意識を募らせるかもしれません。
・親に「どうしてほしいか」聞く
話を一通り聴いたら、子供世代からの提案ではなく、親世代が今の状況に対してどうしてほしいと考えているか尋ねてみます。望む状態にするために、具体的に何をしてほしくて自分に話をしているのかを確認すると、実はただ愚痴を聞いてもらって発散したいだけだったということもあります。
・親の思いを誰かに代弁するときは、「あくまで親の感想である」ことを最初に伝える
親世代の話は本人がそう感じたという「意見」であり、事実とは異なる場合もあります。話を鵜呑みにして自分の意見として伝えないようにしましょう。「親はそう感じているようだけど実際はどうなのか」と相手の言い分も聞くようにします。
・楽しい話にもっていく
愚痴をこぼす相手がいないからといって、いつも不満話ばかりを聞かされるのは子供世代も疲れてしまいます。毎日の生活にあまり変化がない親世代の話はどうしても同じ内容が多くなるので、「今日の朝は何を食べたの?」「そろそろ紅葉の季節だけど、そのあたりならどこがキレイかな」など、楽しい方向に話を展開しやすい質問を投げかけて日常の不満話を回避するのがいいでしょう。
親世代に限らず、不満や愚痴をこぼせる相手がいるということは心のよりどころになり、安心感につながります。
話を聴いて理解してあげつつ、対応できることとできないことを分けて自分自身が必要以上に巻き込まれないように気を付けたいものですね。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
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