詐欺商法を断れなくなる「習慣」【親と繋がる】

連載コラム

コミュニケーションの一環である「おすそ分けとお返し」

昔から行われる「おすそ分け」。皆様もお付き合いのある方と野菜や果物、お赤飯やお菓子などを分け合うことがありますよね。
高齢者の方は古くからその土地に住んでいらっしゃることが多いので、ご近所付き合いも盛んで頻繁におすそ分けをなさっている様子を見かけます。何かをいただいたご好意に対し、なにかお返しをする。この繰り返しが周囲とのコミュニケーションにつながり、孤立化を避けられているとしたら素敵な習慣だと思います。

高齢者 おすそわけ

「断る」ことへの罪悪感

しかし一方で、その習慣が「相手の好意は受けるもの→受け取ったらお返しをするもの」という思い込みになってしまうと良くないこともあります。

私の友人が久しぶりに実家に行き、冷蔵庫を開けると手作り風焼き菓子が10切れほど入っているのを見つけました。それはすっかり固くひからびていて、食べられる状態ではありませんでした。親に聞いてみると「向かいのお家の〇〇さんからおすそ分けされた」とのこと。もともと食が細くあまり間食をしない両親は、お菓子をいただいても食べきれず、かといって手作りということもあり捨てるのが申し訳なく、結果的に冷蔵庫に保管することで罪悪感から逃れていたようなのです。しかもお菓子のお返しを持っていくと、またそのお菓子をいただくループに陥っていました。

高齢者 おすそわけ

親世代は「他人の好意、申し出を断る」ということに抵抗感がある方が特に多いです。他人と同調、協力するように言いきかされて育った時代の人たちですから、「断る=相手の気分を損ねる」と感じてしまい、その心理的負担を避けたいのだと思います。人によっては何かを「断る」と自分の価値が下がってしまう気がして、つい見栄をはってしまうケースもあるでしょう。

「お返ししなくては」の思いが詐欺商法につけこまれる

しかしこれが詐欺商法などの温床になっているところもあるかもしれません。「自分のために時間をとって優しく商品の説明を色々としてくれた→お返しせねば」という意識が働き、断り切れずに商品購入に至ってしまう方もいらっしゃるように思います。
相手の申し出を断らず受け入れることで「お返し」を果たし、「断る」気まずさを回避していると、今後判断力が落ちてきたときに思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。トラブルまで発展しなかったとしても、親が断り切れずになんでも受け入れた結果、しまい込んで忘れている不用品が実家に溢れていた!となると後々片付けが大変です。

高齢者 詐欺商法

捨ててもいい、断ってもいい経験に慣れる

そうはいっても「断ること」は慣れが必要です。
まずは親の「断る罪悪感」を緩和するために断られることに慣れてもらいましょう。
なにか差し上げるときは「これどうぞ」「これ美味しいから食べて」ではなく、「これお好き?」「これ余っているけど必要?」と相手に確認してみるようにしてみます。なんらかの疾患をお持ちで、好きでも食べられない可能性もあります。

さらに親とも「これ買いたい?」「これ食べたい?」など、断ることができる会話を心がけてもいいでしょう。
なんでも断れということではありませんが、断ることは「いけないこと」ではない、時として自分と相手を思いやる場合もあると少しずつ理解してもらえるといいですね。

高齢者 断る罪悪感を無くす


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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