相続に対する親子の見解の相違
親が元気なうちはなんとなく話題にしづらい相続の話ですが、「争続」とも揶揄されるように、親子間のもめ事の原因になり関係を悪化させることが少なくありません。
ある程度の資産をお持ちで、普段から親が税理士さんにご相談なさっているようなご家庭ならともかく、一般的なケースだと相続財産のなかで実家の土地建物が占める割合が大きく、子供が複数いてもどう分けるかあまり深く考えていない親世代が多いかもしれません。
しかも親世代は家父長制度にもとづく昔ながらの家族観を持っているので、漠然と「家を守り継ぐのは長男(第一子)」と考えていて、自分たち亡き後はよしなに取り計らってくれるはずと思っているというお話をよく伺います。
それが子供たち全員の共通認識ならばいいのですが、現代は必ずしも第一子が親の近くに住んでいるとは限らないし「相続財産は子供全員平等に分けるべきだ」と考えているきょうだいがいる場合もあります。
上記のように「相続」に対する親子きょうだいの認識が一致していないと、子供によっては「相続財産の額=親からの愛情量」と受け止め、親との関係ひいてはきょうだい間の仲をこじらせてしまうことがあります。これは家族問題のカウンセリングのご相談でも最近増えてきています。
不動産に対しての親の思いが子供を困らせることも
親世代には「先祖から受け継いだ地面は守れ」といった、不動産に対する思い入れが強い方が多いように感じます。自分、もしくはその親たちが苦労して手に入れた場所なのだから、次世代である子供にも引き継ぎたいと考えるのは理解できますが、現在の子供世代のライフスタイルや人生設計において、それが重荷になってしまう場合もあります。
また、その土地が便利な場所にあり、将来それなりの価格で売却できそうな場合は、実家を相続した人としなかった人で不平等感を生じたり、逆に売るに売れず有効活用もできなさそうな場所であればメンテナンスに費用負担がかかり、トラブルの種になりかねません。ましてきょうだい全員が実家から離れて住んでいればなおさらです。
上記のように、相続発生時の不動産の扱いについては特に、親子間で認識を同一にしておく必要があるでしょう。
親が元気なうちに確認しておくことが大切
現在は「終活」という言葉も一般的になり、自分の死後についてあらかじめ考えている方もいらっしゃるでしょうけれど、実際は「まだ先」「まだ大丈夫」と先延ばしにされているケースが多いのではないでしょうか。
家族間の無用ないさかいを避けるためにも、まずは子供同士で少なくとも実家の相続についてはどうするか話し合っておいたほうがいいと思います。
そしてできれば、親が元気で理解力のあるうちに子供からの希望、意見を伝えておけるとなお良いでしょう。
相続はある意味、親からの最後のプレゼントでもあります。お互い気持ちよく譲り、受け取れるように話し合いができているといいですね。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
コメント