なにげない会話の中で知った親の思い
最近、観光地や街中が賑わってきていますね。コロナ禍で中止されていた地域のお祭りが復活したり、海外からの観光客も多く見かけるようになりました。今まで家に籠りがちだった親世代も、少しずつ外に出る機会が増えてくるといいですね。
そんな中、先日お会いした方から印象深いお話を伺いました。
その方は一人暮らしをしているお母様がいらっしゃるのですが、昨年の春実家に帰ったとき、ロシアのウクライナ侵攻の話から日本の戦時中の話になり、お母様が「もし戦争がなかったら、もっと学校に通いたかった」と当時の思い出を語り始めたそうです。
普段なら昔話の一つとして聞き流しているところですが、その時にふと「いつまたコロナのような感染症が流行しだすかわからないし、まだ親の足腰が動くうちにやりたかったことを叶えてあげたい」という思いがよぎり、「じゃあこの夏にその学校を訪ねてみよう」と提案して、親にとってはかなり久しぶりの旅行をすることになりました。
新しい目標があると親も生き生きしてくる
親が戦時中に住んでいたところは現在の住居とかなり離れている場所だったのですが、ネットを駆使したり役所に聞いたりして探したところ、当時お母様が通っていた小学校の場所がわかりました。
お母様にそれを伝えるととても喜び、夏に向けてコロナワクチンを接種したり旅行グッズを買ったり、文字通り指折り数えて旅行に行く日を楽しみにしていて、電話で話していても生き生きしているのが伝わってきたそうです。
生活に変化が起きづらい高齢者ですが、未来に楽しい目標があるとそれが生きがいになるのですね。
そして夏になり親子二人でお出かけして、当時の小学校の前で写真を撮り、かつて住んでいたあたりを散策し、美味しいものを食べてのんびりして、思い出深い旅となりました。
お母様はまるで子供時代に戻ったように喜んでいて、体力的にも遠出ができる自信がついたらしく、来年は新婚旅行で行った〇〇に行きたい、と次の旅行計画もたてていらしたそうです。
願いを叶えてあげられたという充足感
そのように元気にお過ごしだったお母様でしたが、この春が来る前に突然亡くなってしまったのです。
あまりに突然のことでいまだ驚きと悲しさが心を占める一方で、母親がずっと持っていた思いを最後に叶えてあげられたやりきり感もあり、旅行のことを思い出して「楽しかったね」と心の中でお母様に話しかけると少しだけ笑顔になれて気持ちが落ち着くそうです。
親世代は基本的に「我慢することが当たり前」で育ってきていますから、えてして自分の楽しみや希望は後回しにしがちですし、年齢を考えると一人で実行に移すのもなにかと難しいでしょう。
しかし「やり残した」という思いがあるなら、晩年の今こそそれを叶えてあげたいものです。
若いころに苦労したであろう分、昔はかなわなかった親の思いを実現させて楽しい思い出を作り、もし急に親との別れが訪れても、子供として後悔のない気持ちでその時を受け入れられたらいいなと思いました。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
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