戻れるけれど、戻りたくない子世代の気持ち
あっという間に2022年もあと1か月ほどとなりました。年末帰省はどうするか、そろそろ検討しなくてはと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実家を離れて生活することになった理由は色々あると思いますが、親との関係に悩んでいる方のカウンセリングでは、実家の近くに住みたくないと思ってしまう罪悪感のお話をしばしば聞きます。
親への反発心があったり過干渉を避けたくて、あえて実家から離れた学校や就職先を選び、そこで自分の生活基盤を築いたという方が、親や周りの人から「近くに住まずに親の面倒を見ないのは冷たい、恩知らずだ」などと言われて、自分は感謝の気持ちが持てない親不孝者なのかと感じてしまうのです。
もちろん、物理的に無理な場合は仕方ないですが、近くに住むことも不可能ではない状況なのに、自分の生活を優先したいと考えていたり、実は親とウマが合わず、顔を合わせる機会が多くなれば衝突しそうだという理由で離れて住んでいる場合、そのような思いを持つ方が少なくないようです。
または配偶者と実親の折り合いが悪かったり、あまり負担をかけたくないと気遣っているケースもあります。
いずれにしても「育ててもらった恩義は感じているけれど、同居、近居には抵抗がある。それは子供として不義理なことなのか、ワガママなのか」と自分をダメな人だと感じて、自責の念にかられるのですね。
親子であっても相性がいいとは限らない
親が子供の時代は「親の言うことを聞き、老いては親の面倒を見るのが当たり前」という考えを教え込まれているので、自分の子供に同じことを求める親世代は多いでしょう。
しかし、同じ親から生まれ同じように育てられたきょうだいでも、持って生まれた性格や趣味嗜好が違い、個性があります。親子の愛情や縁があったとしても、親との人間的な相性がいいとは限りません。ゆえに、親がコミュニケーションをとりやすい子、とりにくい子がいるのに、後者の子供に近くに住み、生活の世話をしてほしいと望むのはお互いにとっていい結果にならないでしょう。
親から離れて住むことを自ら選んだ人の中には、親と自分が合わないことを漠然と感じ取っているけれど、そう思うことは親自身や、育ててもらった恩を否定するようで後ろめたさを感じるというケースがあるかもしれませんね。
自力で幸せに過ごしていることこそ最高の親孝行
近くに住めるのに住まないことを、親に申し訳ないと思うことはないと私は思います。
カウンセリングでこういったご相談があると、「親の役目は子供を社会に還元することで、一番の親孝行は子供が自力で幸せに生きていることだと考えれば、お互いの役目は今充分果たされています。離れて住んでいてもできる恩返しを考えるほうが良い関係を保てると割り切っていいのではないですか」と話しています。
ただ、そういった話が親から出た時に「近くに住みたくない」とはっきり言えばこじれてしまいますから「そろそろ転勤になりそうだから」「子供の進学志望校が〇〇市にあるから」など、ウソであっても適当な理由をつけてかわしたほうがいいでしょう。
親に感謝の気持ちを持つことと、人としての相性は別と考えて、まずは自分の生活を大事にしてください。
プロフィール
■氏 名 佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格
「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。
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