親の不安に寄り添う【親と繋がる】

連載コラム

2022年は激動の年

参議院選挙日直前に起こった安倍元総理銃撃事件は日本中に大きな衝撃を与えました。今年はコロナ禍に続きロシアのウクライナ侵攻や全国で頻発する地震、観光船の沈没事故など想定外の出来事が次々と起こっています。また戦争の影響もあり物価が上がったり、20数年ぶりに円安になったりと、実生活でも変化を感じることが多かったですよね。

しかも昨今はインターネットのおかげで世界中の情報がすぐに伝わってきますが、一つの事実に正反対の内容が語られていたり、そもそも情報量が多すぎて何が正しいのか判断しづらいものもあります。想定外のことがおこると誰でも不安になりますが、自身のメンタルを守るためにも、自分の目で見たり聞いたことでなければ、あまり深く受け止めず、場合によっては情報元から距離をとることも必要かと思います。


親世代は社会不安に影響を受けやすい

私の経験上ですが、大きな事件が起こるとだいたい3か月後くらいから高齢者の方のカウンセリングご相談が増え、皆様それぞれ漠然とした不安なお気持ちを話されます。「地震がいつ来るかと思うと眠れない」「病院にいるときもし放火などされたらと思うと怖くて行けない」などといった、直近に起きた出来事を自分の身に置き換えて不安にさいなまれるようです。

大事件はテレビ番組で毎日繰り返し経緯が報道されますし、加えてスマホでネットのニュースをチェックしている親世代は結構多い印象があります。
事件が気になっていても目先の仕事に注力せざるを得ず、ニュースを見ているひまがない子供世代に比べ、親世代は自由時間がたくさんありますから、次々と不安をあおる情報を目にしてしまう機会が多いかもしれません。
そういう点において、親世代は精神面で社会不安の影響を受けやすいといえます。

高齢者 不安

不安を理解してもらえないことで憤る親世代

皆様のお話を伺っていると最初は「役所の対応が悪い」「家族が家に来てくれない」というように、「〇〇のせいで自分は困っている」話から始まり、やがて「それもこれも社会が悪いのだ」などという、行き場のない怒りに移っていくことが多いです。
おそらく、ご自身が感じている漠然とした不安が解消されず、その不安に耐えきれなくなって「自分を不安にさせるものすべてに対する怒り」に転換されているのだと思います。

そして、そういったご相談に共通しているのが、ご家族がいても「話をする相手がいない」とおっしゃることです。
おそらくご家族から見ると、いきなり怒り出したように感じて訳が分からなかったり、いつ起こるかわからないような仮定の話をされても答えようがないので話を受け流していたりするのかもしれません。時として親世代の話は結論がなく、何が言いたいのかわからないことがありますよね。
毎日忙しい子供世代にしてみれば仕方ない対応と思いますが、親が不安をため込みすぎて不眠になったり、たまたま優しい言葉をかけてくれた他人を妄信してしまうようになることは避けたいものです。

高齢者 不安

「不安」は出すことで薄まっていく

不安な気持ちは頭で考えているばかりで行動していないときに大きくなります。
ですので、不安を他人に話したり書き出して、今その不安に対してできることを考え、取り組むことを少しずつ繰り返していくと不安解消に効果があります。
また、不安に共感してもらい「自分だけが不安なのではない」と理解することで、現実は変わらなくても気持ちやとらえ方が変化することもあります。

大きな事件が起こったあとはいつもより頻繁に親に連絡をとってみましょう。そして漠然と世の中に対して不安を感じているようなら、「そうだよね、怖いよね」と共感しつつ、話を聞いてあげてください。漠然とした不安感は聞いてもらっただけでスッキリすることがあります。こんなご時世なのでもちろんご自身のメンタルケアが一番大切ですが、できれば気持ちの余裕を作って親世代のケアもしてあげてください。

高齢者 悩みを吐き出す


プロフィール

氏 名  佐藤 栄子
大手不動産会社で約20年、主に秘書として勤務。社員のヘルスケアも担当したことがきっかけで心理学を学ぶ。義父の介護手伝いのため会社を退職し、退職後は心理カウンセラーとして活動。電話・メール、対面などのカウンセリング、心理テスト作成、コラムの執筆を行っている。
一般社団法人 全国心理業連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験 合格


「親子ネクト〜離れて暮らす親が、ふと心配になったら〜」は、離れて暮らす親を心配されているご家族向けに、親に関する様々なお役立ち情報を発信しているブログサイトです。
タイトルの「親子ネクト」は親とつながる(コネクト)をイメージしております。

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